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​森の海-前編-

○N 不問:ナレーターであり、この世界の神と呼ばれる存在。この世の行く末を見守りながら、時折様々な願いを聞き入れては叶えている。しかし、その時の気分で代償を求めたり、誰かに肩入れしたりと、かなりの気分屋。巫女であるマリアとは意思の疎通が可能。

○ロヴィ♂:10歳。『大英雄』が魔物の滅亡を願った代償として、神に転生させられた。森にいるところを、エアリーの父親が見つけ、領主であるライヤーに掛け合い、孤児としてディオラント領内に住むことになった。エアリーの父親の木こりの仕事を手伝いながら、エアリーとノルとよく遊んでいる。かつてのディオラント領に『大英雄』もよく滞在していたことから、土地勘に優れている。特に森はお気に入りの場所であり、非常に詳しい。
『大英雄』である時に、妖精と魂の契約を交わしており、転生後も妖精の加護を受けている。手のひらを合わせ祈ることで、妖精の呪いが周囲にまき散らされるが、本人は加護のためにその影響を受けない。

○エアリー・スワルフ♀:10歳。エルフの母と人間の父の子。木こりである父と一緒に森の近くに住んでいる。エルフの特徴である長い耳と羽を受け継いでいる。ロヴィとノルと三人でよく遊ぶ。ロヴィのことが好き。明るく元気で、少しだけお転婆。

○ノル・ディオラント♂:10歳。ディオラント領主の一人息子。次期領主でもあり、そのための教育を受けさせられている。大人しく引っ込み思案で、ロヴィやエアリーの後ろをついていくことが多い。ロヴィと比べられることにコンプレックスを抱いているが、自分自身ロヴィのことをとても尊敬している。仲間想いで心優しい少年。

○ライヤー・ディオラント♂:45歳。ディオラント領主であり、ノルの父親。ディオラント領のためならばあらゆる手段を講じるなど冷たい面をもつ一方、次期領主であるノルに熱心に教育を行ったり、領内の民の安寧を望む一面もある。しかし、少数の犠牲で多数が助かるならそれで良しとするために、エルフの生き血を他の領との交易に利用しようと考えている。

(3:1:1)
N不問:
ロヴィ♂:
エアリー♀:
ノル♂:
ライヤー♂:

***


N「今より少しだけ昔の話。人間と魔物による大きな戦争が起きていた。突如として現れた魔物達に、為す術も無く一方的に虐殺された人々。しかし、人間の身でありながら、たった一人で、数多の魔物をなぎ倒す存在がいた。人々は彼を『大英雄』と呼び、神が人々に与えた救いとして、彼を崇めた。そして、彼により魔物は一掃され、長く続いた戦争は、人間側の勝利として終わりを迎えた」

N「そして今、『平和となった世界』の森で、三人の子供が遊んでいた」

ロヴィ「おーい!こっちだこっち!」

ノル「ま…待ってよロヴィ…!」

ロヴィ「ったく、おせーぞノル!!エアリーも早く早くー!!」

エアリー「無理ー!さっき川に落ちた時にハネが濡れちゃったよー!」

ロヴィ「んなもんさっさと乾かしちまえ!」

エアリー「はぁ…無茶言わないでよねー…」

ノル「あ…!こっちに日向があるよエアリー!」

N「子供達の一人はノル・ディオラント。ディオラント領の領主ライヤー・ディオラントの一人息子。大人しく冴えない子で、友達の背中を追いかけてばかりいる」

エアリー「ほんと!?いくいくー!」

N「もう一人はエアリー・スワルフ。長い耳と美しい羽が特徴的な、エルフの血が流れる女の子。元気で明るく、少しだけお転婆」

エアリー「はあー…あったかくてきもちー…」

ロヴィ「おいおい、お前らが見たいっつったんだろー?『森の海』!!」

N「そしてもう一人。誰よりも先を進むこの男の子…名前はロヴィ」

エアリー「『森の海』…見てみたいけどさー…」

ノル「まさか…こんなに大変なんてね…」

ロヴィ「これのどこが大変なんだよ。ちょっと森歩いてるだけだろ?」

エアリー「『ちょっと』…?『歩いてる』…?三時間走ってるの間違いじゃなくて??」

ロヴィ「あれ?もうそんな経つか?」

エアリー「はぁ…これだから『体力お化け』は…」

ノル「すごいよねロヴィは…その体力と運動神経がうらやましいや」

ロヴィ「んなことより、早くいこーぜ『森の海』!日が暮れちまうぞ!」

エアリー「はいはい…羽も乾いてきたし、もうちょっと頑張りますか!」

ノル「わわわっ!今行くから、待って!」

N「木々が生い茂る森の中を、一人ぐいぐい突き進む少年、ロヴィ。彼の正体は…」

ロヴィ「着いたぞ!」

エアリー「え?………わあぁー…!!」

ノル「…す…すごい………一面青い花でいっぱいだ…!!」

エアリー「きれい…何て言う名前の花なんだろう…?」

ロヴィ「へへっ…ここが、『森の海』だ!!にしても、なつかしーなー…」

ノル「………ロヴィって、どうしてここを知ってたの?」

ロヴィ「ああ、それは………いや…そうだな………この間、テキトーに散歩してたら、たまたま見つけてな!」

N「彼の正体は、先の戦争の『大英雄』である」


***


N「ロヴィという少年の正体を正しく言うならば、『大英雄』の記憶を引き継いだ転生体である。突拍子もない話に聞こえるかもしれないが、『大英雄』である彼自身も、一体なぜこうなってしまったのか、よくわかっていなかった。この世の平和を信じ、魔物の滅亡を願い………気が付けば彼は、親を亡くした小さな少年となっていた」

ロヴィ「むにゃむにゃ…(寝言)」

エアリー「………きて………起きてロヴィ!」

ロヴィ「ん…?エル…フ………」

エアリー「なぁにぃ??私は確かにエルフだけど、ちゃんとエアリーって言う名前があるんですけどぉ??」

ロヴィ「エ………にげ………」

エアリー「何寝ぼけてるの!?早く起きなさーい!!」

ロヴィ「うおっと!?え、あれ………エアリーか…」

エアリー「もう!いつまで寝てるの!?今日はお父さんと木こりのお仕事するって言ってたじゃない!!」

ロヴィ「あ、やっべ」

エアリー「やっべじゃないわよ!急いで行くわよ!!」

N「エアリー・スワルフの父親は人間だった。母親がエルフであり、エアリーはその血を色濃く引き継いでいるが、物心がつく頃には母親は既に亡くなっていた。今は木こりの父親と二人暮らしである」

ロヴィ「そう言えば、ノルは今日どうした?」

エアリー「ノルは領主様の子なんだから、ロヴィと違って忙しいのよ」

ロヴィ「ちぇっどうせ暇人ですよぉー」

N「ノル・ディオラントの父親はこのディオラント領を統治する領主であった。その一人息子であるノルは、次の領主となるべく、その教育を幼い頃から欠かさずに受けてきた」

N「しかし、次期領主への教育は決して順風満帆ではなかった。少なくとも、現領主であるライヤー・ディオラントはそう思っていた」

(平手打ち)

ライヤー「なぜこんなこともできないんだ!!簡単なことだろう?『大英雄』によって魔物が完全に滅んだ、それはつまり交易が活発化していくということであるから、今後の課題は有益な特産物の存在だ」

ノル「はい…ごめんなさい…」

ライヤー「全く、先が思いやられる…。先代のような力も無ければ、私ごときの知恵にも及ばない。一体お前には何ができるというのだ」

ノル「………はい」

ライヤー「『はい』?何が『はい』だ!お前には何ができるかと聞いているのに!」

ノル「ご…ごめんなさい…」

ライヤー「………世界は確かに平和になった。しかし『大英雄』が失踪している今、民の心が平和であるとは言い難い。いつまた魔物が現れるかわかったものじゃない。だからこそ、民の上に立つ我々が、及ばずとも『大英雄』の代わりとなり、民をより良い安寧へと導かねばならない。…それだと言うのにお前は………!」

ノル「………っ」

ライヤー「(ため息)………お前が、あの孤児(みなしご)のような力と知恵があればな…」

ノル「!!…ロヴィのこと…ですか…!?」

ライヤー「ああ、そんな名前だったかな?森に迷い込んでいた素性の知れない少年など…と思っていたが、見た目の割には非常に有能だ。木こりにしておくにはもったいない」

ノル「………っ!お父様!お父様はっ…!!」

ライヤー「ノル。お前は私の息子だ。たった一人の息子だ。今お前が思ったことは全くありえない話だ。お前は次のディオラント領を統べる人間だ。わかったな?」

ノル「………はい」

ライヤー「………不安はあるが、そろそろお前にも話しておくか」

ノル「…?何のことですか…?」

ライヤー「大変重要な計画だ。今後のディオラント領の行く末を左右すると言っても過言ではない。この話をお前にするということが一体どういうことなのか、理解しているな?」

ノル「………はいっ」

ライヤー「…いいだろう。こっちへ来い」

N「現領主に招かれるままに、ノルは屋敷の廊下を歩いていった。広い屋敷の中をしばらく歩いていると、やけに奥まった場所に扉が見えた。屋敷には多くの部屋があり、ここで生まれ育ったノルでさえも入ったことのない部屋はたくさんある。だからノルはその奥まった場所にある部屋が何のためにあるかなど、もちろん知らなかった」

ライヤー「(ノック音)私だ」

N「領主の一声で扉は開いた。扉を開けたのは、無意味に微笑み続ける従者だった。彼は部屋の奥へ二人を誘う。その部屋はやけに豪華絢爛で、まるで誰かをもてなす場所のようだった」

ライヤー「ノル、確認だ。我がディオラント領の今後の課題とは何だ?」

ノル「えっ…えっと…有益な…特産物…?」

ライヤー「交易のための有益な特産物の存在だ。これから話す計画は、我が領の存続に関わる計画だ。そして同時に、お前に重要な任務を言い渡す。いいな」

ノル「………はい」

N「そうして物語は動き出す」

ライヤー「エアリーを捕獲しろ」

 

***


(斧で木を切るロヴィ)

ロヴィ「…ふっ!…ふっ!………っし!こんなもんかな!ふぅ…ちょっと熱中し過ぎたか…?だいぶ日が沈んできた。早くエアリーの親父さんと合流するか」

ロヴィ「………ん?何か、森の様子が…」

エアリー「きゃあああああああああああ!?」

ロヴィ「っ!?今の声、エアリーか!?」

N「静かな森の中を劈く悲鳴に、ロヴィは思わず手にしていた斧を放り投げ、悲鳴の方へ駆け出した」

ロヴィ「エアリー!!エアリー!!!」

エアリー「ロヴィ!!助けて!!」

ロヴィ「そこかっ!?エアリー………っ!?誰だお前ら!!」

N「キノコを採っていたはずのエアリーは、不気味な黒ずくめの者達に捕らえられていた。エアリーは恐怖から体ががくがくと震え続けている。涙でぐしゃぐしゃになりながら、か細い声で助けを求め続けている。頬には大きな痣ができていた」

ロヴィ「エアリー!しっかりしろ!!…お前ら、一体何の用だ!!」

N「黒ずくめの集団は応えないまま、ロヴィをナイフでけん制しつつ、少しずつ距離を離していく」

ロヴィ「くそっ!一体何だ…って………」

N「ロヴィの中の時間が止まった。何か手段はないかと考えを巡らせた矢先に、足元をどくどくと流れ出す血が目に入った。辿っていくと、そこには」

エアリー「ロヴィっ…お父さん………動かないの………!」

ロヴィ「………っ!!ふざけんなよっ…こんなの………ああ、くそっ…いつまでたっても、結局そういうことかよ………」

エアリー「ロ…ヴィ…?」

ロヴィ「またエルフか?エルフの生き血か?不老不死ってか?………いい加減にしろよ…いい加減に気づけよお前ら…。お前達の身勝手で全部繰り返されるんだぞっ…!」

エアリー「ロ…ロヴィ…?」

ロヴィ「少しでも信じた俺がバカだったな………なぁ領主様?」

N「その声に応じるように、黒ずくめの一人が顔をさらした」

ライヤー「…ばれていたか。聡い子だ、もったいない」

エアリー「え!?なん、で…??」

ライヤー「すまないねエルフの少女。ディオラント領のために少しだけ君の力が必要なんだ」

エアリー「力って…」

ロヴィ「不老不死なんて今更流行らないだろうが」

ライヤー「流行る流行らないなんて問題ではないのが、不老不死だと思うがね」

エアリー「何…?何の話…?」

ロヴィ「気にするなエアリー。そいつは噂話に溺れたただの老いぼれだ、耳を貸すな」

ライヤー「だがその噂話が時として救いにもなる。渇望する人間は多い」

ロヴィ「自分が救われるための犠牲を他人に求めている時点で、救いようがないけどな」

ライヤー「………君は聡い子だ。この状況が理解できていないわけじゃないだろう。大人しく、全てを見なかったことにする…それだけで争いを避けることができる」

ロヴィ「………そうだな、目の前の問題から逃げて、自分の都合の良いように考えるのは、とても楽だ」

ライヤー「なら…」

ロヴィ「だがそれが間違いだと、俺はもう知っている!!」

ライヤー「っ!?」

N「ロヴィが勢いよく手のひらを合わせると、領主を含める黒ずくめの集団とエアリーの視界が奪われた」

ライヤー「くそ、何が起こって…!」

エアリー「いや、何、真っ暗…!!」

ロヴィ「エアリー、ちょっとじっとしてろよ」

エアリー「え…?わっ!!何!?」

ロヴィ「大丈夫だ!俺だ!」(エアリーを抱えて逃げる)

エアリー「ロヴィ…ロヴィなんだね…!」

ロヴィ「ああ!しばらくそのまま我慢してろよ!ここから離れるぞ!!」

N「黒い霧の中で、『大英雄』は“また”誰かを救おうと必死になっていた」


***


ロヴィ「…っはあ…っはあ…まだ…まだだ!!」

N「かつて、『大英雄』はたった一人で魔物達を相手に戦っていた。たまたま丈夫な人間として生まれただけの子だったが、当時の人々にはそれが大きな希望に見えたようで、『神の申し子』だとか謳われ続け、気づけば一騎当千の『大英雄』になっていた。そういうやつだ」

ロヴィ「もう少しで…魔物なんて…いなくなって…そうすればっ!!」

N「頭のおかしいものに囃し立てられた、真面目な愚か者…それが『大英雄』だった」

ロヴィ「神様…どうか俺に、力を貸してくれっ!!」

N「他者を傷つけるのは魔物だけではないということを彼が知る頃には、魔物の姿なんてもう見当たらない世界になっていた」

ロヴィ「神よ…全知全能の神よ…!何でも知ってるんだろ!?人間なんてろくでもないって知ってたんだろ!?どうして…どうして俺に力を寄越したんだ…何で俺に…こんな…無意味な………」

N「…うるさいなぁ。身勝手なやつ」

 

***


ノル「父様はきっと、僕じゃなくてロヴィが息子だったら良かったのにって、そう思っているんだ。期待されたい、認められたい、僕の代わりなんていない、そんな特別な存在になりたい。…なのに、神様…どうして僕はこんなにも取り柄のない存在なんでしょうか。どうして僕には何の力もないのでしょうか。どうしたら僕は、なりたい自分になれるんでしょうか」

ライヤー「エアリーを捕獲しろ。ノル、期待しているぞ」

ノル「僕は…」

N「(ため息)」


***

エアリー「ロヴィ…?ずっと走ってるけど、大丈夫??」

ロヴィ「大丈夫だ、もう少しで安全な場所までいけるから…(被弾)っ!!?」(倒れる)

エアリー「いたっ…じ、地面?ロヴィ?ロヴィ??何が起きたの??」

ロヴィ「くそっ!見えてないはずだっつーのに…あいつら、適当に…撃ちやがった、な…」

エアリー「ロヴィ?大丈夫なの?ねえ!」

ロヴィ「っ!くそっ…いてぇ、うごかね…」

エアリー「ロヴィ?ロヴィ、まさか…撃たれたの!?」

ロヴィ「エアリー…逃げろ…」

エアリー「無理よ!ロヴィを置いていけないし、そもそも何も見えないわ!!」

ロヴィ「は…そりゃそうか…妖精の、呪い…お前に加護はない、もんな………ああ、くそっ…やっぱ子供の体、だな…。視界が、ぼや…けて…」

N「だんだんと指先の感覚が無くなっていく。少しずつ重くなる瞼を必死にこじ開けようとする。その時、ロヴィの薄れゆく視界の中に見慣れた姿が現れた」

ロヴィ「ノル…?」

エアリー「え、ノル…?ノルがいるの!?」

ノル「…っ!ロヴィ、エアリー…」

ロヴィ「…?………ああ、そうか…まさか…お前もか…?」

エアリー「ノル!ノル!お願い助けて!!ロヴィが撃たれたみたいでっ!!」

ロヴィ「そりゃそうか…親父だもんな、逆らえないよな………」

エアリー「近くに怖い人達がいるの!!助けて!!」

ロヴィ「いい、ノル…逆らえない、気持ちは…わかる…から………」

ノル「ロヴィ。大丈夫、僕は君達より大切なものなんてない」

ロヴィ「…?おい、それは…」

ノル「君達を助けに来たんだ。僕は、君のように何でもできる人ではないけれど、僕にできることなら何でもする。ロヴィ、僕はどうしたらいい?」

ロヴィ「…いいんだな…?」

ノル「………うん。もう、いいんだ…」

ロヴィ「…ノルは、強いな………街には戻れそうか?」

ノル「ううん…父様…ライヤーに逆らって部屋に閉じ込められたところを、たまたままだ何も知らないでいる使用人に出してもらっただけだから…」

ロヴィ「もう息が、かかっちまってそうだな…となると、外…か…」

エアリー「ね…ねぇ?ロヴィ…?ノル…?」

ロヴィ「…ノル、いいか、エアリーを連れて『海の森』に行け…あそこは…聖域………悪いやつは、入れない…ように…なって…」

ノル「わかった。エアリー、動ける?」

エアリー「う、うん…ちょっとずつ見えるようには…え、待って!ロヴィも行くんだよね?」

ノル「…エアリー」

エアリー「ロヴィ!…そうだ!怪我で動けないなら、私の生き血?っていうの?それ飲めばいいじゃん!ね!」

ロヴィ「エアリー」

エアリー「…っ」

ロヴィ「どうか俺をもう、『大英雄』なんかに…させないで…。ただの…木こりの、まま…で…」

エアリー「…ねぇ、いや…」

ロヴィ「ノル…俺、何にも、できな…かったよ………。周りの…き…いに、逆ら…なくて…(周りの期待に逆らえなくて)」

ノル「そんなことないよ。君は、ずっと…僕の憧れなんだ」

ロヴィ「俺に………ルの、ゆ…きが、あ……らなぁ………(俺にノルの勇気があったらなぁ)」

エアリー「ロヴィ!!だめ!!お願い!!!」

ノル「エアリー、もう行こう」

エアリー「嫌!!だってロヴィが…!!」

ノル「エアリー!!!」

エアリー「っ!」

ノル「…ねぇエアリー…頼むよっ…」

エアリー「………っ!!(しばらくロヴィを見た後、走り出す)」

N「二人の背中を朧気に見つめながら、ロヴィは惜しむように瞼を閉じた。遠ざかる足音と、近づいてくる足音を大地から感じ、ただ二人の無事を神に祈りながら、その時を待った」

N「思い出の中のロヴィに導かれながら『森の海』を目指すノルとエアリーが、乾いた銃声を聞いてしまうまで、そう時間はかからなかった」

N「………それにしても、まさか彼が私に祈りを捧げるなんて、なるほど…それほど二人を護りたかったのですね。………全く、世話の焼ける木こりだなぁ」

 

the first volume finished.

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