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​心残り

〇エリオ♂:25歳くらい。若い頭脳派。常識人。仲間想い。
〇ガストーネ♂:とにかく筋肉。渋くて古風。忠誠心が強い。
〇リーザ♀:25歳くらい。情緒不安定。婚期を逃しそうで焦ってる。
〇ロディ♂:15歳くらい。わがまま。偉そうにしているが、本当は寂しい。
〇アナウンス 不問:人のことにも一喜一憂できるお人よしなアナウンス。

***

エリオ♂:
ガストーネ♂:
リーザ♀:
ロディ♂:

アナウンス(どなたか兼役):

***

リーザ「う…ひっぐ…」

ガストーネ「ごじゅうはちっ………ごじゅうきゅっ………」(数えながら腕立てをする)

ロディ「ねぇここ暑くない?暖炉の火消そうよー?」

エリオ「…お前達、久しぶりに会ったのに自由過ぎやしないか…?」

リーザ「うぅ…だって、彼に裏切られたのよぉ?そんなの…泣くしか…うわあああん」

ロディ「うるさいリーザ!騙されるお前が悪いんだろ!?」

リーザ「あんたに何がわかるっていうのよ!あぁ…いい男だったのに…ひっぐ…」

ガストーネ「はちじゅうごっ………はちじゅうろくっ………」

ロディ「ああもう!ガストーネは腕立てをやめろ!蒸し暑くてしかたないだろ!!」

ガストーネ「だが…私はもっと鍛えなければ…」

ロディ「あーこれだから脳筋は嫌だね!バカみたい!イライラする!」

エリオ「おい落ち着けロディ。あと別にこの部屋は暑くないだろう?俺もガストーネもリーザも丁度いいと思ってるぞ。な?」

リーザ「ええ。むしろ冷え切ってるわ…心が」

ガストーネ「どのような気温であっても、心頭滅却すれば…」

ロディ「エリオ!こいつらバカだから話にならないよ!あー暑い暑い!」

エリオ「はぁ………お前らなぁ、死人は死人らしく黙ってろよ」

リーザ「嫌よぉ!彼が実は既婚者で、その相手の女に背中から刺されて死んだなんて…認めないんだからぁあ!」

エリオ「認めろリーザ。お前は少し焦り過ぎたんだ」

リーザ「うわああんエリオのバカああ!!」

ガストーネ「私は…死んでしまったのか…」

エリオ「ああ。俺はお前が死ぬのを見た。大人数相手にお前はよく戦ったよ」

ガストーネ「そうだったのか…よく覚えていないがしかし、私は負けてしまったのだな…」

ロディ「自分が死んでることもわからないなんて、やっぱ脳筋だな!あっはっはっは!」

エリオ「ロディ、お前も死んでるぞ」

ロディ「はぁ!?僕が!?」

エリオ「あぁ。お前は敵の罠にかかって焼死した」

ロディ「そんなまぬけな死に方するわけないでしょ!?エリオは嘘ばっかりだ!」

エリオ「はぁ…なんとでも言え」

リーザ「でも…そうよね。もう死んだのよね。だったら来世こそ、いい男と結婚してやるんだからっ!」

エリオ「お。泣き止んだかリーザ」

リーザ「いつまでも泣いてたらボスに怒られちゃうもの!」

ガストーネ「ボス………そうだエリオ!ボスはっ!ボスはどうなったのだ!」

エリオ「…」

ロディ「エリオ…?う、嘘だよね…?ボス、ここにいないじゃん!ってことはさ、死んでないよね!?」

エリオ「…すまない。俺もわからない」

ロディ「そんな…」

リーザ「ボスぅ…うっ…ひっぐ…」

ガストーネ「私が弱いばかりに…ボス…」

エリオ「あー、お前達泣くな。あのボスのことだ、きっとどこかで生きてるさ。ロディも言ってたが、今この場にいないってことは、生きてる可能性があるわけなんだからな」

リーザ「ボス…生きてたとしても、寂しくて泣いてないかしら…。あ!ボスに作ってあげたプリン、冷蔵庫に入ってるって言ってないわ!ボスが…プリン食べれなくて…泣いちゃう………うぅ…ぐすっ…」

エリオ「だからすぐ泣くなってリーザ」

ガストーネ「私が死んでしまったら、ボスは誰と訓練すればよいのだろうか…。お体が鈍ってしまわれていないだろうか…」

エリオ「ボス…ゲーム好きだからな。訓練せずに楽しく遊んでるだろうよ」

ガストーネ「ならぬ!ファミリーのボスともあろうお方が、そのような体たらく…!」

エリオ「まぁいいじゃねぇか。世襲制で仕方なくボスになっちまっただけで、中身はただのガキなんだ」

ロディ「本当にね。ボスったら、僕が遊んでやろうとしても、『忙しい』とか言って断るくらいガキなんだよね!」

エリオ「お前よりは確かに大人だったがな」

ロディ「なんだとぉ…?」

リーザ「ボス………生きてるかしら…」

エリオ「………」

ガストーネ「ところでエリオ。お前はどうして死んでしまったのだ?前線に出て戦う私達はまだしも、ボスの側近であるお前が死ぬというのは…」

ロディ「え?…あ。そうだよエリオ!何でお前死んでんだよ!ボスを護る最後の砦だろ!?何やってんだ!!」

エリオ「…返す言葉もない」

リーザ「…どうして、死んでしまったの?」

エリオ「…鮮明には思い出せんが、俺は銃弾を喰らって死んだ…ような気がする」

ガストーネ「そうか…。お前のことだ、きっと最後までボスを護り抜いたのだろう」

リーザ「…ボス…先代が亡くなった時も、泣いていたわよね…」

ロディ「そりゃ…自分の父親だもんな…」

リーザ「今も、あの時みたいに………」

エリオ「よそう。きっと元気にしているはずさ」

ガストーネ「ご病気で亡くなった先代を毎日看病していらっしゃった。あの健気なお姿に、命を捧げようと思ったものだ」

ロディ「うん。僕らに任せればいいのに、自分で先代の薬を買いに行ってたもんね…」

ガストーネ「うぬ。先代の優しさをしっかりと受け継いでいらっしゃる」

リーザ「…私、決めた」

エリオ「あ?」

ガストーネ「ぬ?」

ロディ「何?」

リーザ「私、来世もボスの側にいる!」

エリオ「結婚は?」

リーザ「結婚も…する…」

ロディ「え、待ってよ。来世って、僕達が自由に決められるものなの??」

リーザ「バカね!そこは気合でどうにかすんのよっ!」

ロディ「えぇ…」

ガストーネ「…私も、ボスのお側にいることを望む」

ロディ「…僕だってそりゃ、そうなったらいいなって思うけど…」

ガストーネ「では決まりだ。私達は来世も、ボスにお仕えいたすぞ!」

リーザ・ロディ「おー!」


(ガストーネ、リーザ、ロディは部屋を出る)


エリオN「何かがおかしい。一人部屋に残された俺は、ふと自分の死に際を思い返した」

エリオ「背中から…撃たれて………」

エリオN「そこで気づいた。一人、ほくそ笑む男の姿に」

アナウンス『おめでとうございます!あなた達3名は希望の転生先に行けますよ!』

エリオN「部屋の外から聞こえたアナウンスに、あいつらがすでに行ってしまったことを知る」

エリオ「くそっ…!またっ………あいつらを護れなかった…!!」

FIN.

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