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​怪力姫

〇ルーナ♀
14歳。怪力姫と呼ばれる国のお姫様。美しく品のある容姿。基本的に淡々と話し、表情も変えない。
歳の割には大人びた考え方をしがち。やたら強い。
〇ディン♂
15歳ぐらい。スラムで暮らす暗殺者。ずっと眉間にしわが寄っている。幼いながらユイリと一緒に暗殺者として生きている。自分は頭が良いと思っていて、ユイリをよくバカにする。ユイリ以外の女の子に免疫がない。そこそこ強い。
〇ユイリ♀
15歳ぐらい。スラムで暮らす。男の子に見えるけど女の子。ディンと一緒に暗殺者として生きているが、諜報係とディンの回収係で、殺しはしない。自分は頭が良いと思っていて、ディンをよくバカにする。肝が据わっており、平気で嘘をつく。行き当たりばったり。
〇リノ♀
20歳前半。メイド。ゆるふわ系。基本的にはルーナの世話係。ビビりでルーナを怖がっている。仕事はやればできる。
〇王様♂
40歳後半。王様。情けないビビり。娘のルーナを怖がっている。
〇兵士♂
20歳から30歳くらい。偏見の塊。城の兵士であることを誇っていて、女性やスラムに住む人を下に見がち。
〇侵入者♂
20歳後半くらい。お金も家も何もない。でも思い切りの良さはある。

***

ルーナ♀:
ディン♂:
ユイリ♀:
リノ♀:
王様♂:
兵士&侵入者♂:

***


リノN「とある国の、とある姫様のお話です。姫様は大変お美しくおしとやかでありました。しかし、姫様とお近づきになりたいと思う者は誰一人おりませんでした。なぜなら、姫様が………異常なまでの怪力の持ち主であったからです」


***


ユイリ「ディン…ディン!起きて!」

ディン「…ん、ユイリ………何だ…?」

ユイリ「チャンスよ!こんなスラムでの泥臭い生活とおさらばする、絶好の機会よ!」

ディン「わ…わかった。だから落ち着いて、ゆっくり話してくれ」

ユイリ「落ち着いているわ!じゃなかったらもっとうるさいわよ!?それくらい、ビッグは話なの!!」

ディン「だから、わかったって。で、その話って?」

ユイリ「ふふっ………2億よ」

ディン「は?」

ユイリ「ルーナ・ウィンスレットっていう女の子を暗殺すれば、2億もらえるの!私達よりも小さな女の子らしいわ!それだけで2億!ね、絶対簡単だし、いい話じゃない!?」

ディン「ユイリ…それ、どこからの依頼だ?」

ユイリ「知らない」

ディン「はぁ…またそうやって………。じゃあ、どういう奴から依頼された?」

ユイリ「大人の男だったよ」

ディン「ユイリ。大人の男が、何で俺達みたいな子どもに暗殺を頼むと思う?しかも2億も賭けて」

ユイリ「自分の手を汚したくないんじゃない?」

ディン「だったらもっと大人に頼むはずだろ。ユイリ…この国のお姫様の名前、知ってるか?」

ユイリ「さあ?興味ない」

ディン「ルーナ・ウィンスレットって言うんだよ」

ユイリ「ふーん……………ええ!?」

ディン「そういうことだ。この国の姫の暗殺を、俺達なんかに依頼するってことは、既に何人にも依頼したが失敗しているってことだろうな。2億もそういうことだ。ダメもとで頼まれたんだよ、俺達は」

ユイリ「むむ…警備の目が厳しいとかかな?」

ディン「それはわかんねぇけど、まぁその辺だろうな」

ユイリ「うーん………でもさ、ディン。だからと言って…」

ディン「ああもちろんだユイリ。だからと言って、引き受けないわけじゃねぇ」

ユイリ「ディンに殺せない奴はいないよ。確かに子どもかもしれないけど、それでもディンは何人も殺してきたもん」

ディン「どうも相棒。さっさと成功させて、こんな汚ぇ空気とはおさらばしようぜ」


***


リノ「ひ…姫様。お勉強の時間でございます…」

ルーナ「今日は何?」

リノ「ひっ!あ、あの…今日は…歴史を………」

ルーナ「そう、ではやりましょう………あら」

リノ「!?ど、どどどうかされまし………はっ!!猫!?」

ルーナ「…」

リノ「すすすすみません姫様!!ほら猫!!しっしっ!!あっち行って早くぅ!!お願いだからぁ!!」

ルーナ「っ(壁を殴って破壊する)」

リノ「ひいいい!!姫様すみません!!!あああ壁がっ!!昨日直ったばかりなのに…」

王様「いつもの破壊音が聞こえたけれど…もしかして…」

リノ「へ、陛下!すみません…私の配慮が行き届いておらず…」

王様「あ…ああ…また壁が…ははは…」

ルーナ「…お父様」

王様「ひょえ!?ル、ルーナ?責めているわけではないんだよ?だ、大丈夫だからね…?」

ルーナ「…私、外に行ってくるわ」

リノ「あ!お、お待ちください姫様…!」

ルーナ「ついてこなくていいわ」

リノ「あ…す、すみません…」


***


ディン「何だよ。警備なんてザルじゃねぇかよ。………何かさっきすごい音したのが気になるが」

ディンN「中庭の茂みに隠れ、標的のルーナ姫を視界にとらえた。護衛の一人もつけず、木の下で呑気に本なんて読んでいやがる。2億が一気に近づいた。チャンスは今だ…!」

ディン「死ねっ!!(ナイフをもって飛び掛かる)」

ルーナ「っ!?(ディンの姿を見て驚く)…っ!!(ナイフを振り下ろされるより早く殴る)」

ディン「っぶは!!(殴られて吹っ飛ぶ)」

ルーナ「だ…誰?」

ディンN「いって…何が起こった…?やばい…視界がぐらぐら揺れる…」

ルーナ「私を殺しに来たの?」

ディン「あ………が………」

ディンN「まずい…うまくしゃべれない…意識…が………」

ユイリ「チッ仕方ない…回収ぅう!!」(ディンを抱えて逃げる)

ルーナ「あ…」

ディンN「遠のく意識の中、ルーナ姫の顔が目に焼き付いた」


***


ユイリ「ディン…ディン!起きて!」

ディン「………う…ユイリ?」

ユイリ「よかった生きてる!じゃあ次の作戦言うわよ!」

ディン「鬼か…お前は…」

ユイリ「2億がかかってるんだもん当然じゃない!」

ディン「…はぁ」

ユイリ「ディンよりも早く殴りかかれるのは想定外だったわね…しかも怪力。さすが2億。っていうわけで、殴られないように、今度は………」

ディン「………まぁ、やってみるか」

ユイリ「いける!完璧な作戦だもん!」


***


ルーナ「お父様、先日…」

王様「ぴひゃあ!?ル、ルーナ!?ど、どうしたんだい!?」

ルーナ「暗殺者が…」

王様「あ…ああ、また撃退したのかい?…おっと、もうこんな時間か!すまないが来客が…」

ルーナ「…大丈夫よ」

リノ「ひ、姫様…お茶の時間です…」

ルーナ「…わかったわ」

リノ「ほ…本日は、ベリータルトとアールグレイで…ございます…」

ルーナ「ありが…(カップを持ち上げるが取っ手を破壊し落とす)」

リノ「あああああすみません!!姫様のお力のことを考えず弱々しいカップをご用意いたしましたこと、ど…どどどうかお許しください!!すぐに拭くものをお持ちいたしますうううう!!」

ルーナ「…行ってしまったわね。服ぐらい構わないのだけれど…」

ディン「カップを落とした…?毒入りを見抜いたのか…?(小声)」

ユイリ「しかたない…ディン、GO!(小声)」

ディン「うらっ!(ナイフをルーナに向かって投げる)」

ルーナ「タルトでも食べていましょ………あ…(とんできたナイフが手にもったフォークに弾かれる)」

ユイリ「なんでフォークにあたってるのよへたくそ!!(小声)」

ディン「あいつが動いたんだよ!っつーかナイフあたってもフォーク落とさねぇって、力込め過ぎだろフォークごときに!!」

ユイリ「あ!バカ!声でか…!(小声)」

ルーナ「そこに、誰かいるの?」

ディン「やべっ(小声)」

ルーナ「………出てこないのね。だったら………よいしょっ」

ユイリ「え?あのお姫様、木ぃ引っこ抜いて…え??(小声)」

ディン「おいおい…冗談だろ…?(小声)」

ルーナ「そこの茂みかしら………えい(木を振り回す)」

ディン「うわあああああああ!!」

ユイリ「ににに逃げるべしっ!」(茂みから出て逃げる)

ディン「あ!てめっ…ぶはっ!!」(茂みの外へ吹っ飛ばされる)

ルーナ「あら、この間の…」

ディン「こ…のぉ………」

ルーナ「ねぇ、少し…」

ディン「ち…く…しょぉ………」

ユイリ「回収ぅう!!」(ディンを抱えて逃げる)

ルーナ「あ!話…を………」

ディンN「またしても失敗したが、こちらに向かって手を伸ばすルーナ姫の姿が、脳裏に焼き付いた」


***


ユイリ「ディン…ディン!起きて!」

ディン「もうやだ…起きたくない…」

ユイリ「よし生きてるわね!じゃあ次の作戦!」

ディン「ありえねぇ…この悪魔…」

ユイリ「安心してディン!今度こそ成功するわよ!!」

ディン「…はぁ」


***


リノ「陛下…姫様のことなのですが………」

王様「ま、また何かやってしまったのかい…??」

リノ「いえ、その…先ほど家庭教師の方から辞職の届け出が…」

王様「…またか………はぁ」

リノ「本日のお勉強にも来てくださらないようで…」

王様「あの子…ルーナは…ど、どうだった?」

リノ「今は中庭にいらっしゃいますが…どういったお気持ちであるのか、全くわからない状態でして…」

王様「…だよねぇ。本当にいつも無表情だもんね…」

リノ「とりあえず、至急新しい家庭教師の手配を行っていることと、姫様のご様子をお伝えさせていただきます」

王様「ありがとう。引き続きよろしく」


***


ルーナN「中庭で本を読むのが好き。一人で静かにいられて、誰にも迷惑をかけなくて済むから。家庭教師がまた辞めてしまったみたいで、仕方なくまた本を読みに中庭に来たのだけれど…」

ルーナ「…痛い」

ルーナN「まさか、落とし穴があるとは思わなかった」

ユイリ「よっしゃああひっかかったああ!!」

ディン「ひっかかるのかよ…」

ユイリ「チャンスよディン!」

ディン「ああ、わかっ………っ!?うおあああああ!?」

ユイリ「ディン!?」

ディン「いって!」

ルーナ「いたっ」

ユイリ「ディン!何であんたも落ちてんのよ!!」

ディン「てめぇもっとしっかり作れユイリ!穴の近くの足場崩れたぞバカ!!」

ユイリ「と、とにかく何かロープとか持ってくるから!待ってて!」

ディン「待っててって…持っておけよそれくらい!!バーカ!!」

ルーナ「…ねぇ」

ディン「あ!?」

ルーナ「いつまで下敷きになっていればいい?」

ディン「あ、悪い…ってそうじゃねぇ!あんたの命、もらうぜ…って、いたたたた!!悪かった!!腕折れるから放してくれ!!」

ルーナ「私とお話してくれるなら、放してあげる」

ディン「わかったから!!」

ルーナ「ねぇ、最近何度か来てたけれど、私を殺しに来たのよね?」

ディン「ああ、そうだよ」

ルーナ「どうして?」

ディン「…さぁな。俺達は雇われただけだからな」

ルーナ「…そう」

ディン「…あんた、何でそんな顔すんだよ」

ルーナ「え?私、変な顔してたかしら…」

ディン「そういうことじゃねぇけどよ…いや、なんでもねぇわ」

ルーナ「…私、怖いかしら?」

ディン「…まぁな。できればもう二度と会いたくないくらいにはな」

ルーナ「…でも、どうして何度も来てくれるの?」

ディン「金がもらえるからだ。いつまでもスラムで暮らしていたくはない。恵まれたあんたにはわかんねぇだろうがな」

ルーナ「怖いのに?」

ディン「あんたより怖い人間なんて山ほどいるからな」

ルーナ「…」

ディン「…」

ルーナ「…ねぇ、お願いがあるのだけれど」

ディン「あ?誰が聞くか」

ルーナ「お願い、聞いてくれたらお金を払うわ」

ディン「聞こう」

ルーナ「…明日も、来てほしい」

ディン「………は?何言ってんだ?」

ルーナ「暗殺とかじゃなくて、友達として堂々と来てほしい」

ディン「友達じゃねぇだろ、あんたと俺は」

ルーナ「あ…えっと、友達に…なってほしいんだけれど…」

ディン「スラムのガキと仲良くしていい身分じゃねぇだろうが」

ルーナ「お願い。私、こんなに怪力だから…友達とかいなくて…。本当はね、動物が好きなの。でも傷つけてしまいそうだから、威嚇して逃がすの。本当はね、物を壊したくなんてないの。でもうまく力を制御できないから、いつもみんなに迷惑をかけてしまう…。みんなに、嫌われているの。………お父様とも、たくさんお話したいのだけれど…うまくいかないの」

ディン「………そうかよ」

ルーナ「私…本当はもっとみんなの役に立ちたい…迷惑、かけたくない…っ!」

ディン「…なぁそれさ。言う相手は俺じゃねぇだろ」

ルーナ「え…?」

ディン「………いいぜ。明日まで、友達やってやる」

ルーナ「…!…ありがとう。待っているわ」

ユイリ「おーい!ロープ持ってきたよー!…って、あれ?ディン顔赤いけど、熱ある??大丈夫??」

ディン「うるっせぇぞユイリ!さっさと助けろ!」

ルーナ「ディンさん、ユイリさん。私、ルーナと申します。明日もよろしくお願いします」

ユイリ「…へ?ディンどういうこと?」

ディン「明日まで俺達は友達だ。そういう依頼だ、ユイリ」


***


ユイリ「あーどうしよう!こんなボロボロの服で大丈夫かな?ね?」

ディン「しょうがねぇだろ。服買う金なんてねぇし。真っ裸じゃなきゃ大丈夫だろ」

ユイリ「男はいいよねー」

ディン「てめぇも似たようなもんだろ」

ユイリ「サイテー!!」

ディン「…?城の様子、おかしくないか?」

ユイリ「…本当だ。いつも暇そうに突っ立ってただけの兵士達が、忙しそうにしてるね。…あの姫様、また何か壊したのかな?」

ディン「いや、それにしては随分と…」

兵士「護衛はどうした!?誰も側にいなかったのか!?」

リノ「す、すみません…!」

兵士「ったく、これだからメイド風情は…」

ユイリ「…あのー、何かあったんですか?」

兵士「誰だお前達は!恰好から見るにスラムのガキか!?ここはお前達のような者が来るところじゃない!!」

ディン「ルーナ姫の友達です。姫様に聞いてみればわかると思います」

兵士「友達…?あの姫様に…?怪しいぞ、お前達!」

ユイリ「うるさいなぁ!姫様に聞いてみてって言ってるじゃん!」

リノ「姫様の…お友達………あ!聞いております!」

兵士「何!?」

ユイリ「ほうらみろ!」

リノ「ですが、今は姫様とお会いすることができませんので…」

ディン「どうしてですか?」

兵士「お前達が知るようなことではない!」

リノ「それがですね…今、人質にとられていまして…」

ディン「っ!?」

ユイリ「嘘っ!?」

兵士「おいメイドっ!?…ったく、そういうわけだから、お前達はとっととスラムに帰りな!」

ユイリ「…えー、そんなこと言っちゃっていいのー?」

兵士「何!?」

ユイリ「だって私達、あのつよーい姫様と"暗殺ごっこ"して遊べるくらいには、デキるガキなんだけどなぁー」

ディン「ユ、ユイリ!?」

リノ「あ、あの姫様と…!?」

ユイリ「うん!特にこのディンなんてさ、姫様と対等に渡りあえちゃうんだからー」

ディン「対…等…?」

リノ「そ、それはぜひともご協力願いたいです!!」

ディン「なっ!」

ユイリ「でしょー?ほらわかったら通して通してー」

リノ「こちらでございます!」

ディン「ユイリてめぇっ…!!」

ユイリ「このまますごすごと帰ったってしょうがないんだから、行くぞ!」


***


侵入者「おら!!命が惜しかったら、金と隣国への渡航券を、早く寄越しなぁ!!」

ルーナ「…っ」

侵入者「おらおらおらぁ!!早くしな!!さもないと…」

王様「ひぃっ」

侵入者「王の命はないぜ!?」

ユイリ「って、そっち!?姫様が人質じゃないの!?」

侵入者「バ、バカを言うなそこのガキ!!人質ってのは弱い奴を狙うもんだ!!」

ディン「…まぁ、納得はいくな」

ルーナ「どうしましょう…お父様が…」

王様「ルーナ…無理はしちゃだめだよ、おとなしく要求に従えば、みんながハッピーになれるんだから、ね?」

ルーナ「いけないわ。このような無礼者を他国に送ることは、この国の恥となります」

王様「あう!娘の方がしっかりしてるっ!」

侵入者「じゃあこの王様の命、もらっちまってもいいんだな!?」

王様「ひぃぃっ!!」

ルーナ「っ!」

ディン「………なぁルーナ姫さんよ、もうそんな顔すんな。後ろを振り返ってみろ」

ルーナ「…?」

ユイリ「へへっ!やっほー!」

ディン「あんたはもう一人じゃないんだ。少しは友達を頼ってみろよ」

ルーナ「ディンさん…ユイリさん…」

ユイリ「"さん"はいらないよ、ルーナ!友達なんだから!」

ルーナ「ディン…ルーナ…ありがとう。でも、どうやって…」

ディン「いい考えがある…ちょっとこっち来い」


***


侵入者「はっ!姫さんどっかに逃げちまったみてぇだなぁ?王様?」

王様「うぅ…い、いいんだ…うぅ…」

侵入者「おい金と渡航券はまだか!」

リノ「ひ、ひぃい!こ、ここここちらにっ!」

侵入者「ほう…結構でけぇカバンに入ってるじゃねぇか。さぞかしたんまり入れてくれたんだろぉなぁ?」

ユイリ「うん、いっぱい入ってるよ!一生暮らせそうですごくうらやましい!」

侵入者「ほっほぉいいねぇ!おいガキ、そのカバンこっちに持ってきな!」

王様「こ、こんな子供にそんな危ないことさせられないよ!」

ユイリ「いいよ!」

王様「いいの!?」

侵入者「へっへっへ…これで貧乏生活ともおさらば…」

ユイリ「ディン、GO!」

侵入者「あ!?…か、カバンの中から…ガキだとぉ!?」

ディン「はぁああ!」

侵入者「チッ!ガキの振り回すナイフなんか喰らうかよっ…!」

ディン「ルーナ、GO!」

ユイリ「王様はこっちに!」

王様「え、うん…あれ、あの木…」

ルーナ「お父様…私っ………」(木を引っこ抜く)

王様「じゅ、樹齢400年の…ご神木なんだけど…」

侵入者「お…おいおいおい嘘だろ!?」

ルーナ「お友達が…」(木を振りかざす)

侵入者「待て早まるなぁああああ!!」

ルーナ「できたよぉお!!」(木を振り下ろす)

侵入者「ぷぎゃああああ!!」

ディン「ぐはあああああ!!」

王様「おめでとおおおお!!…ってそうじゃなくて!!ご神木!!罰当たりだから戻してね!?」

ユイリ「ディン、姫様の一撃喰らうの好きだねぇ」

ディン「好きで…喰らって………ねぇ………」

ルーナ「えへへ…あははは…!」

ルーナN「お父様。私、本当は動物が好きなの。本当は物なんて壊したくないの。本当は…もっとお話したいの。私のことを知ってほしいし、見てほしい。暗殺者が来たことも、友達ができたことも、全部お話したい。だから…」

ルーナ「お父様。私ね…!」

ルーナN「だから、私から少しずつ、がんばるね」


***


ディン「あー…そんなこともあったっけか」

ルーナ「あら、忘れたの?」

ユイリ「ディンも歳なんじゃない?」

ディン「てめぇもそんなに変わんねぇだろ」

ルーナ「暗殺者だったのに、今じゃ二人とも立派な護衛だものね」

ユイリ「ルーナにはいらないと思うけどね…」

ディン「護衛したことは一度もないな」

ルーナ「そんなことない。私はいつも、二人に護られているわ」

ディン「…」

ユイリ「…」

ルーナ「…?どうしたの二人とも、私何かおかしなことを言ったかしら…?」

ユイリ「ううん。何にも!」

ディン「いい顔するようになったじゃねぇか、ルーナ」


リノN「とある国の、とある姫様のお話です。姫様は大変お美しくおしとやかでありました。しかし、姫様とお近づきになりたいと思う者は誰一人おりませんでした。なぜなら、姫様が………異常なまでの怪力の持ち主であったからです」

リノN「しかし姫様は知りました。物理的な力なんかよりも遥かに強力な力を………その力の誇らしさを。すると姫様の周りは、気が付けばたくさんの人で溢れており、その笑顔で多くの幸せを運んだそうです」


FIN.

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